街の風景と、そこにある暮らし【前編】
北海道函館市
このくらしの主
蒲生寛之さん(38歳)
北海道函館市出身。20歳で函館を出てから、オーストラリアや東京での生活を経た後、故郷函館で生業を持ちたいと思い、2013年にUターン。
現在、家業である不動産会社で勤務しながら、宿の運営など、多角的にまちづくりに参画している。
函館の西部地区で、妻とふたりの子ども、そして義母と暮らしている。
撮影時期:2022年5〜6月
■蒲生寛之さんの活動
ー平日って何時くらいに起きるの?
7時ぐらいかな。
ー朝は食べる?
朝は絶対食べるな。
朝はほぼ100%パン派で、近くにスコーンマフィンの焼き菓子屋さんがあるから。後は、パン屋さんもね。トンボロとかさ。
ーじゃあ、いつもそういうところで買って食べるの?
毎日じゃないけど、割と確率は高い。
焼き菓子屋さんのスコーンマフィンと、トンボロのパンの確率はけっこうと高くて。後は、普通にスーパーとかコンビニとかで買ったりとか。
簡単な朝ごはんとコーヒーで済ませることが多い。
ーで、何時頃に家出るの?
結構イレギュラーもあるんだけど、一番多いのは、9時ちょい前くらい。
ーけっこうゆったりしてるんだね。2時間くらい。
その時間って何してんの?
子どもたちと一緒にご飯たべて、上の子が8時、下の子が8時20分頃に、妻が送りに行くんだけど、その後に着替えて準備するかみたい感じで。早ければ、8時半くらいに出ることもあるし。
好きな建物がやっぱりすごい多いから
ー家から事務所まではどのくらい?
車で2〜3分ぐらいじゃないかな。歩いたら10分。
ーあ、そんなに近いんだね。で、それはなにゆえの車なの?(笑)
ってなるよね。(笑)
これってたぶんどっぷり函館人の感覚で、車から離れられなくなってて。歩けば痩せるし、いいじゃんとは思ってるんだけど。車があることに慣れてしまって。
で、車を降りて、最初に目に入る景色がこれっていう。
ーどう?この景色とか。
好き好き。
ー函館に帰ってきてから、何年も経ってると思うけど、やっぱり好きなんだね。
好きだね。
好きだし、これ職業病みたいなもんかもしれないんだけど、通勤途中とかもさ、道路の脇の建物の様子とか見るじゃん。
あれ、あそこガラ袋あるけど、解体されんのか、とか。
好きな建物がやっぱりすごい多いから、そういうのを無意識にでも毎日目に入るっていうのが気持ちいいなっていうのは。
ーお隣さん、コーヒー屋さんなんだね。
隣はコーヒー屋さんで、向こう側はハンバーガー屋さん。その隣が和食居酒屋。で、その隣が小村商店さんっていう酒屋さんで、小村さんが大家さんなんだよ、ここの。
この4件の中では、うちが一番最後。うちもここ入ってまだ2〜3年って感じなんだよね。
ーじゃ、前からこのコーヒー屋さんとかもあったんだ。
でも、ここ5〜6年くらいじゃないかな。
ー元々の函館の人がやってるの?
確かね。ほとんどみんなUターンじゃないかな。
ー元々家業で蒲生商事を不動産屋としてやってるんだよね?
そう。
ーそこに社員としているの?
そう。ま、役員だけどね。
ーなるほど。何人くらいの会社なの?規模的には。
しばらくの間、自分と父だけだったの。で、たまに母さん来るみたいな。
なんだけど、どっちももうリアイヤも視野に入れてくってこともあって、3年くらい前かな、パートスタッフを一人雇って。
それからもう一人、2年くらい前から営業マンも働いてくれてる。
そのぐらいからうちの父親も長い時間は事務所にいないようになって、今は3人がこのオフィスに毎日いるみたいな。
ーで、蒲生商事はそれであって、箱バル不動産っていうのは?
蒲生商事は、宅建業を持った不動産屋として、函館市と近郊を拠点として不動産業をやってて、箱バル不動産は、民間まちづくりに近い考え方で、旧市街でしか活動しませんよっていう、蒲生商事の中の社内の一つのブランドみたいな、という位置付けで今やってる。
ーで、他にも塗装の会社みたいなのもやってるよね?
函館島っていう別のプロジェクトもやってて、それも法人格持って、別のデザイナーの人とやってるんだけど。
函館空港の観光案内所をこのプロジェクトでやらせてもらったんだよね。
だから、自分にはあってるかなって
ーこれが事務所に入ったとこだよね?
そうそう。
9時ちょっと前には着くかな。
ーこの方は?
この方は事務のスタッフで、今この人は朝の掃除をしているところ。
事務所に来た順で掃除をはじめてるみたいな。
掃除が終わったら朝礼で、情報共有をして。
後は、午前中は事務仕事だったりが多いかな、メール返したりとか。
ーこの方は、函館の人?
移住者なんだよね。
SNSでだけ募集したんだ。そしたらきてくれたの。
ーどこから来たの?
岐阜県だったかな。
旦那さんの転勤で、函館に来ることになってって言ってた。旦那さんは大学の先生なんだけど。
で、函館来てみたら、函館好きになってみたいな。
ーそういえば、東京で働いてるときの感覚と違ったりする?
そもそも場所性っていうよりはさ、雇用する側になってしまったから。そこがまず全然違うかな。
就業時間とかないみたいな感じじゃん。休みもあんまり関係ないみたいな。逆に自由なのは自由なんだよ。だから、自分にはあってるかなって思うけど。
それまでは雇用されて、何時から何時までにこれをしてくださいみたいな感じだったから。
だから、全然変わったかなって。
ここは、うちの自社物件の入居者さんがきまって、これから自分達のお店をつくっていくっていうところで、うちの方で工事手配してやってるっていうとこ。
もともとここって賃貸出してなかったんだけど、その人たちが、どうしても条件にあう物件が出てこなかったときに、元々倉庫にしてたところなんだけど、どうですか?って話をしたら、興味あるって話になって。
貸し出す広さとか、仕切りの位置とかを相談して、っていうのがあってここを借りてもらうことになったっていう。
ーおもしろそうだね。
うん、楽しい。これは。
なんか雰囲気いいよねって、共有できててさ
で、これがこの建物の好きなポイントだったんだけど、建物の向かいがグリーンベルトになってて、緑が目に入るし、道路幅も広くてゆったり開放的で、なんか雰囲気いいよねっていうのをお客さんと共有できててさ。
ーいいよね。不動産屋さんとそうやって感覚共有できて、融通きいてもらってってなかなか聞かない話だから。
でも、変わった不動産屋ではあるよね。
今回の工事してもらった業者さんからも、自分だったら、こういう建物見たら、壊すっていう発想しか出てこないですよねって言われて。
8月くらいにはオープンするのかな。
ー何屋さんなの?
コーヒーと雑貨かな。雑貨は元々洋服屋さんやってた旦那さんが担当して、奥さんがコーヒー出すって言ってたから。
個人的には、いま一番楽しみな新しいお店かな。
これは、電車通り沿いの大町っていう駅の目の前なんだ。
で、写真の左に写ってる建物の二階より上が、市営住宅なのよ。で、一階が全部店舗で。
だから、もともと八百屋さんとか魚屋さんとかラーメン屋とか、なんかそういうのがズラーっと入ってたみたいなんだけど。
おれがこっちに引っ越してきたころとかから、店がやってた印象がほぼなくて。
ものの2~3年くらい前までは、ずっと空家さ。調剤薬局だけは営業してたような記憶だね。
で、仕事でお客さんから調べてくれっていうのがあって、調べたら仲介できたんだよね。それから、ここやろうよってなって、所有者バーっと調べていって、動き始めたんだよね。
そしたら、最終的にいま全部埋まったんだよね。
これって結構さ、インパクトでかいじゃん。いままで全部空き家だったところが、全部店になりましたっていうのは。
これを面にも波及させていきたいっていうのが、この写真で。
ここいま空き地なんだけど。うちらがここに着手し始めた時って、空き家が2棟建ってたんだよね。調べたら、北海道警察の官舎だったんだよ。だけど、解体の予算がつかないっていう状況だったりして。
それで、なかなか前に進めないだろうなって思ってたら、その数ヶ月後に、当時コンタクト取ってた警察の職員がいて。で、声掛けて、どうしたんですかってきいたら、実は、解体の予算ついて壊すことになったんですよって話になって。
土地は函館市の持ち物だったから、そうなると、大体は公売って言って、一般に売るんだけど、そしたら何建つのかわかんないじゃん。それで希望しないものが建っちゃうのが嫌だなと思って。
それで、急いで活用プラン作って、函館市に持ってって。きいてもらったんだよね。
そしたら、いいですねって話に幸いなって、そっからさらに提案を続けてて。
それで、去年からほんとにしょっちゅうここにきてますよっていう。
ー思ってた以上に盛り上がってるね。
そうなんだよね。
この1~2年、西部地区すごいことになってるんだよね。店がものすごい勢いで増えてる。
なんだかんだ、やっぱり乗り越えれたんだよね
チェックインのある日は、午後に2時くらいには一回宿に寄らなきゃいけないんだ。ちなみに大三坂ビルヂングの共用部分の掃除もオフィスの掃除と一緒に毎朝するんだよね。
ー事務所と宿はそんなに近いの?
歩いて1分かかんないくらい。
ーそんなに近いんだ!
チェックインの作業も自らやるの?
そうなんだよね。前はチェックインのスタッフもいたんだけど、コロナになってほぼキャンセルで、全部なくなったわけじゃん。そうなったら、人いらない訳で。
それからは、そういうチェックインのスタッフっていうのは特に募集してなくて、オレがするようにしたんだ。
でも、今シーズンはお客さんが結構戻ってきて、ちょうどチェックインしてくれる仲間も1人増えたところなんだよね。
ーどう?宿をやるっていうのは。
そうね。
でもやっぱり、自分でやりたいっていうのがあって始めてさ、かつ、この大三坂ビルヂングっていうのを再生させて、残していきたいっていう想いもあって。
大袈裟にいうと覚悟みたいのもあったからさ、簡単にはやめたくない気持ちで始めたんだけど。
コロナになる前も、厚真の地震が初年度できちゃって、予定してた人が全部キャンセルになったりとか、色々なことがあったんだけど、なんだかんだ、やっぱり乗り越えれたんだよね。
今回のコロナもそうだったんだけどさ。
なんとか凌いでやってきたら、今年のゴールデンウィークあたりからまた回復してきてさ。観光の方は。
だから、まだまだやってきたいなっていうのはね。
ー楽しい?
楽しい楽しい。やっぱりここに泊まりたくて選んでくれるっていう人がほとんどだから、きた時のコミュニケーションも共感が多かったり、共通言語が多かったりとかするから。
それこそ街紹介したくてっていうコンセプトでやってたりするから。
今回行くとこ決まってるんですか?っていう時に、ローカルの店紹介できたりとかして。
それで喜んでもらえると、こっちも嬉しかったりとか。
そういう感じだね。
「昼いく?」とか連絡とって
ーお昼だよね?
ひとりでいくの?お昼は。
そうね。
大体ひとりだけど、妻と「昼いく?」とか連絡とって、一緒にいくときもある。歩いて。
ーいいね。なんか。
ちなみに家に帰ってお昼食べたりとかもあるの?
あるある。
ー東京の感覚だとあんまりそういうことないから、新鮮な感じするけど。
おれは結構好きだな。
家すぐ近くにあって、今日家でレトルトのカレーくらいはあったかなとか。ちょっと前だったら、子どもも幼稚園にまだ行ってなかったから、会えるじゃん。昼飯に帰ってきたら、会えるみたいのがあるから。
ーここ、うまいの?塩ラーメン?
うまいんだよ。有名なのはネギ塩。おれは、チャーハンとあんかけ焼きそばが好きなんだよね。あと、カレーライスがうまいってことも最近気付いて。
「助けてください」的な文章が入ってきてさ
月に一回、町内会の役員会みたいのがあるんだわ。これは、平日の夕方だわ。
2019年ぐらいのときに、餅つき大会のお知らせと、別紙で「役員が高齢だったりで存続の危機です。助けてください」的な文章が入ってきてさ。
お、何事だ?ってなって。
餅つき行ってみたいっていうのも一つあったのと、そういえば町会って今風にいえば地域コミュニティかとか、自分なりに考えてみたりして、いってみたのよ。餅つき大会に。
そこで、関係者っぽい人に「手紙見たんですけど」って声かけてみたら、月一回の役員会に出始めることになって。元々は、高齢の人ばっかりだったんだけど、色々あって、結果的に今、ほとんど子育て世代の役員会になったんだよね。
で、毎月その人たちと色々催しを企画しながら、やっていってるっていう。
今日はビール何缶にしようかなって
そんなこんな色んな仕事だったり、地域コミュニティにまで手をつけてしまい、大忙しなんだけど、一日の最後に、今日はビール何缶にしようかなっていうのを決めて入るセイコーマート。
昼間もたまにここで時間ないときにホットシェフでおにぎりと唐揚げを買って、車の中で移動中に食べるってことしたりもするから。かなり寄るところなんだけど。
ーどのくらい飲んでるの?
アベレージ500、2缶だね。
ー結構いくね。(笑)
子どもたちがお風呂とか上がったあと、寝なさいよとかママに怒られたりしながらも、遊んでたりするっていう。
最近、柱に登るっていう遊びを覚えた下の子だね。
ー家ってナオコさんの実家に住んでるんだったよね?
そう。妻の実家。
2階にお母さんが住んでて、一人にしては大きな家だし、おれたち夫婦は古い建物好きだしって事で、Uターンしてわりと間も無く、上の子供が産まれた頃から暮らすようになったんだよね。
人ってやっぱり、会って、話して、安心感ある人に相談したいって思うよなって
さっきセイコーマートで買ってきたカロリーオフの金麦を飲みながら、つくっててくれた晩御飯を食べて。
スマホをスタンドにたてて、YouTubeでニュースをみたりとかニュースピックスみたりとか。あとは、音楽かけたりとか。なにかしら流しながら。一人の時間。
この頃にはもう寝かしつけが始まってたりするから。
ーこれは何時頃?
10時ぐらいかな。
ーなんか家の暇な時間にする趣味とかってあったりする?
あぁ、口に出すと切なくなるけど、ないかな。大体は仕事してるか、飯食ってるかだね。それかこうやってリラックスしてるか。
それ以外ってなると休日とかになるかな。ごく稀に映画みれたりするときはあるけど。
ーで、10時くらいからはじめて、どのくらいに寝るの?
12時ぐらいには寝るかな。
ーあ、割と短時間でけっこういくんだね。(笑)
あ、でも、12時まで起きてるときは、2本で終わってないかもね。ここに写ってるラム酒持ってきちゃったりとか。ウイスキー持ってきちゃったりとか。
ー結構飲むんだね。飲むときは、もっぱら家なんだ?
対策とかしながらだけど、最近は外にも出るようにもなってるかな。
不動産業っていう仕事って、情報がないと厳しいから、人と合わないとだめだって、強く思うようになってさ、最近は意識して外に出るようにし始めてるんだよね。
もともと人付き合いが得意な方じゃなかったから。
わりと今は意識的にだれかと食事に誘って、外にいく頻度も増えてきてる。
ー不動産屋さんがどういうこと意識してるかってよくわかってなかったんだけど、人と会って情報を得るっていうことがやっぱり大事なんだね。
大事だと思うわ。
結局はさ、不動産持ってる人と知り合わなきゃいけないじゃん。
もちろんwebで、仕事もらうっていう割合も高いんだけど、やっぱり知ってる人に頼みたいなって人って少なくないと思うんだよ。
言っても、人ってやっぱり、会って、話して、安心感ある人に相談したいって思うよなって改めて感じててさ。
ってことは、やっぱりどんどん人に会って、繋がりを持っていかないとっていうことを最近特に強く意識し始めてさ。
(聞き手:カトウ シュン)
後編は、家族との時間、そして函館で過ごした少年時代に遡ることで、また別の視点から蒲生さんにとっての函館が見えてきます。