住み慣れた町で心を整える/北海道旭川


このくらしの主:タカハシ シオリさん(28歳)

北海道旭川市出身。高校卒業までの18年間を旭川で過ごす。北海道内の大学に進学し、東京の会社に就職。しかし都会の会社員生活に馴染めず実家のある旭川に戻ることに。精神的にダメージを受けたこともあり、当面定職には就かず自分をじっくり見つめる期間をもった。その後はこどもの居場所をつくる仕事に奮闘しながら、様々なイベントに参加。自らもこどもから大人まで多様な人が集まる「場」をプロデュースする活動をスタートさせた。現在は旭川市内のシェアハウスに住みながら、様々な人との出会いに刺激を受けつつ、新たな挑戦に向けて準備中。

■タカハシさんの活動
タカハシさんのFacebook:https://www.facebook.com/shioriii.takahashi

 

タカハシさんのキーワード
#旭川 #20代 #Uターン #ツリーハウス #シェアハウス #イベント #リノベーション #森

 

撮影時期:2019年11月~12月

 


 

朝起きて、8~9時くらいに近所を散歩する。
朝の散歩は心を整える大事なルーティン。今の住まいから常磐公園(旭川市街地にある大きな公園)までは歩いて10分弱。
旭川は四季がはっきりしていて、公園を散歩していると季節の移ろいを感じることができる。この写真は11月上旬頃。冬が迫っていることを感じさせる冷たい風に、落ち葉を踏みしめる感触が気持ちいい。

 

 

 

常盤公園から徒歩3分圏内には旭川を代表する橋、『旭橋』もお散歩コース。
橋から見下ろす石狩川が流れるさま、そして水の流れる音が好き。

 

 

時間があるときは旭川の街中を通り抜けて、30分くらいかけて旭川駅の方まで歩くことも。
「歩く」という行為自体が足を前に踏み出すことの連続だからか、自然と思考が前に向かっていく。いろいろな出来事があって気持ちが落ち込んでいる時も、歩いていると前向きな気持ちになれる。木々や川、四季折々の自然を直に感じながら、広々とした道を1人で颯爽と足を進めていけるのは、この土地ならではの特権かなぁ…と思う。

 

 

 

散歩を終え、住んでいるnest(ネスト)へ戻る。
自分が住んでいるnestは、元歯科医院だった築60年の建物を改装したワーキングスペース兼シェアハウス。地域の子どもから社会人、人生の大先輩まで多種多様な人々と協働しながらセルフリノベーションした。nest co-livingは、2階がシェアハウス、1階がワーキングスペースとして活用されている。
nestの立ち上げに関わったきっかけは、一昨年自身が企画した「TAKIBITALK」という焚き火を囲んでフリートークをするイベントでnest発起人の菊池さんとの出会い。「旭川で何かに挑戦したい人の後押しをする」というコンセプトに共感し、nestに管理人として住みながら手伝いをしていた。

 

 

 

日中はだいたいnestのワーキングスペースか、お気に入りのカフェでデスクワークをする。
このときはnestの1階スペースでお仕事をしていた。
日々、いくつかのプロジェクトが同時並行で進んでいて、自分が企画しているイベントの準備や関係者との打ち合わせを行っている。こうした機会が多くなって、人と人の出会いの場をプロデュースしたり、様々な背景を持った人がそれぞれの居場所を見つけられるような場を作りたいという思いが強くなっていった。

 

 

 

昼食は息抜きがてらカフェに行くことも多いが、この日は知り合いの大学生に作ってもらったご飯で昼食。
彼女は働く目的を考える「ハタモク」というイベントで知り合った大学生で、「もっと料理をする環境がほしい」というニーズと私自身の「たまには誰かにごはんを作ってもらいたい!」というニーズがマッチしたこともあり、居住スペースの広いキッチンで作ってもらった。一緒に食卓を囲むと話も弾む。自分で作るごはんを作るのもいいけれど、時々誰かの思いがこもったごはんを食べること、作ってくれた方と日常のことを話しながら一緒に食べられる時間は、すごく嬉しいし、尊い。

 

 

 

昼食は自分で作ることもある。
これは別の日のランチ。2〜3年前に出会った有機野菜を育てる上富良野の農家さんのところのにんにくがとても美味しいので、よく購入してペペロンチーノを作る。この農家さんとは収穫時期になったらお手伝いをしに行ったり、美味しいご飯を一緒に食べながら何時間も語ったりと、今でも仲良くさせていただいている。

 

 

 

nestには老若男女問わず様々な人が集う。
学生、高校や大学の先生、インテリアコーディネーター、農家さん、主婦、保育士さん、電気屋さん、家具職人、IT関係の方、車関係のお仕事の方、医療関係、行政関係の方…思いがけない出会いがあって楽しいし、刺激を受けることも多い。

 

 

 

とある日、古典が大好きな高校生が大人向けに古典のミニワークショップを開いてくれた。
この日は、彼女が選んだ伊勢物語の和歌がもつ言葉の意味を紐解きながら、みんなで「恋」についてあれこれ考えや想像を膨らませた。当時の背景や文化に想いを馳せ、人々は何を感じ生きていたのかを探る時間がとても楽しく、まさに「をかし」な趣深い時間だった。

 

 

 

休日は自然の中で過ごすことが多い。
この日は旭川から車で30分ほどの場所に位置する「当麻山」を散策するフィールドワークに参加。鳥の鳴き声に耳を傾けたり、雪に残った動物の足跡から生き物たちのくらしを妄想したり。参加者それぞれの視点でストーリーを重ねていく時間がおもしろい。

 

 

 

森の中に行くと、街にいる時のような壁や、車の走る音や、雑音が少ないからか、自然と心が開かれる。辺り一面に育つ木々の生き様と、自分の心情を重ね合わせてみて、じっくり自分の”今”を見つめる時間を持つこともしばしば。

 

 

 

この日はツリーハウスプロジェクトのため、旭川市のお隣にある当麻町の森へ。
当麻町の地域おこし協力隊で家具職人でもある原さんと意気投合して、彼が所有する森の中にツリーハウスを作るというプロジェクトを2017年12月から進めている。木の成長や森の未来を考えながら、病気で腐ってしまっている木や他の木の成長を妨げてしまっている木を厳選して間伐し、運んで、削って、木材にして、組み立てて、固定して…という作業を参加者と協力しながら行っていく。(参加者の9割以上が素人。)
あえて設計図は用意していない。森と人のペースに合わせて月に1度ゆるく開催している。設計図を作らないのは、ここに毎月入れ替わり立ち代わりするメンバーたちが能動的に参加できる「余白」を残すため。その都度集まったメンバーの知恵と力を合わせて作っていくため、ゴールが決まっているよりも、終わりの見えないワクワクがある方が良いと判断した。
近頃は少しずつ反響が広がって、札幌や道外からもわざわざ人が来てくれるようになった。

 

 

 

ツリーハウスを建てる傍ら、焚き火で暖をとる。
お昼はこの火を使い、様々な料理を作るのも楽しみのひとつ。その日の参加者の持ち寄りで、豚バラブロックを直火であぶったり、チーズ、マシュマロ、時に鹿肉、寒い時はスープやカレーを作って食べる。それぞれがそれぞれにつくる料理で、美味しさを分け合い、楽しんでくれている。

 

 

 

旭川市内にはお気に入りの場所がいくつかある。
ここはお気に入りプレイスの1つ、『Cafe 旭荘』。旭川名産の家具や、薪ストーブも使用されているホッとひと息つきたくなる落ち着く空間。地元の食材をふんだんに使ったピザやパスタに、思わず笑みがこぼれる。人に会いに行くことも好きだけれど、1人カフェで内省する時間も自分にとっては大切。よくお客さんとして利用していたが、ご縁があって最近アルバイトを始めた。

 

 

 

ここもお気に入りプレイスの1つ、『旭川公園ゲストハウス』。
「普段着の旭川を味わう」というコンセプトの宿泊施設で、日中はカフェ営業もしている。庭に遊具もあり、近所の子どももよく遊びに来る場所で、本州から旭川に移住したオーナー夫婦との会話が盛り上がりすぎて、なかなか仕事が進まないことも。

 

 

 

2週に1回くらい整体に通っている。
施術をしてくれる工藤さんもnestで出会った人。オステオパシーという、対症療法とは異なり症状の原因に着目して自然治癒力を高めるというアプローチ。心と体をメンテナンスし続けて、体調が良くなってきたように感じる。

 

 

 

 

約3年の期間を経て、今年から個人として、『個性をもつ1人1人が“らしく、豊かに”生きられる社会を実現する』というのをテーマに活動していくことを決めた。
その手段としてどんな活動をするかはもう少し模索予定。大好きな町旭川でくらしながら、自分が経験したことや人とのつながりを生かして、日々忙しく頑張る多くの人の暮らしが豊かになるお手伝いができたらと切に願う。お世話になったシェアハウスからも近々卒業して、自立へと着実に歩を進めていきたい。

 

人や自然との適切な距離感。その心地よさに癒されることで、次の活動へのエネルギーになっていく。
旭川という街は、タカハシさんにとって住み慣れた「地元」であるとともに、その心地よさを感じられる街なんだろうなと話を聞きながら思いました。
また、僕自身も旭川出身ですが、自分が旭川にいるときには感じられなかった新しい活動も魅力的に映りました。
地元旭川の新たな魅力を感じれられたインタビューでした。



この記事を書いた人:サワモトハジメ