これからの自分をみつけた、真鶴での時間

「すれ違う人に 挨拶をするようになった」

これからの自分をみつけた、真鶴での時間

神奈川県真鶴

このくらしの主
タカハシ マサトさん(24歳)

静岡県静岡市出身。大学まで静岡在住だったが、縁あって、真鶴にある”泊まれる出版社”の「真鶴出版」のアシスタントスタッフとして勤務することになり、20年7月に真鶴へ移住。また、同時に真鶴のベーカリー「秋日和」でも勤務し、ダブルワーカーとして働く。21年6月末で真鶴を引っ越し、都内のベーカリーで修行予定。

“一日の始まり”感が出る

7時に起床、コーヒーを淹れる。

コーヒーを朝入れるのはルーティン化されていて、“一日の始まり”感が出る。淹れる時にビーカーを使うのは、学生時代にコーヒー豆屋さんでバイトしていたのときの名残。

移住してすぐの頃は、静岡にあるそのコーヒー豆屋さんや近くの小田原で豆を買っていたが、今は最近真鶴に移住されてきた方のコーヒー豆屋さんができたので、そこで買うようになった。

 

 

朝、家の扉を開けてすぐの風景。
朝にこの景色を見て、気がシュッと引き締まる。

これから出勤するベーカリー「秋日和」も、もう一つの勤務先の「真鶴出版」も見渡せる。
毎日見る景色だけど、割と好き。

 

 

8時、ベーカリー「秋日和」の勤務が始まる。
担当はパンのカットや梱包、陳列などオープン前作業。これはホールのパンを切り分けているところ。

雑誌の編集にも興味があったが、元々食にも興味があって、「真鶴出版」のオーナーに紹介されて働き始めた。ベーカリーは編集業務とはまた少し違う意味でクリエイティブな仕事。特に暮らし視点で人と密接に関わることができる働き方は、魅力的に感じている。

 

 

すれ違う人に挨拶をするようになった

ベーカリー「秋日和」の仕事が終わると一時帰宅する。

この道は「秋日和」から家に帰る途中の道。人が2人並んで歩くのがギリギリくらいの狭さ。こうした裏道は、傾斜が多くてアップダウンが激しい真鶴に張り巡っていて、住人の生活導線になっている。

地元にいるときは、道ですれ違っても知り合いとしか挨拶してこなかったが、この道を通るようになってから、見知らぬおじいちゃんでも、おばあちゃんでも、すれ違う人に挨拶をするようになった。

自然と会話が生まれる道の細さと、外からの人でも気軽に受け入れてくれる真鶴の人たちのおかげだと思う。

 

 

13時ごろ、今度は「真鶴出版」の勤務が始まる。

「真鶴出版」は家から歩いて5分くらいの場所にある。正面に見える赤い屋根の建物が「真鶴出版」。

裏道的にみえるが、ここも普通に人が行き交う。ちなみに、真鶴では昔から石材業が発展していったため、町の中に石垣や岩を積んでいる土地などが多いのも特徴。

「真鶴出版」は、”泊まれる出版社”をコンセプトに宿泊業と出版業を行なっている。自分は、宿の手伝いも編集業務もどちらも担当している。

 

 

まず最初の業務は、お客さんのチェックイン準備。

2階の客室のベッドメイキングなどを行う。客室の家具は古道具や作家さんの作品などを使っている。手前の椅子は、真鶴の大工・原田登さんのつくった特製脚立。

 

 

宿泊業務が落ち着くと、編集の作業へ。

これは1階のレセプション兼作業スペースで打ち合わせをしているところ。こうした打ち合わせは週1回、それ以外はデスクワークで編集作業をする。

 

 

ここにある窓は“静の窓”

これはキッチン側のスペースで編集作業をしている様子。

エントランス側の窓は開口部を大きくして外と内の境界をなくしているのに対して、キッチン側の窓はブロック塀を残すことでプライベート感を出している。そんな窓の外の風景を眺めながら、作業をする。

「真鶴出版」では、真鶴の町を知ってもらうために、宿泊客と一緒に町歩きをして案内する業務がある。この日は町歩きの担当ではなかったが、担当の日は編集業務よりも町歩きを優先する。

 

 

干物で感動したのは初めてだった

平日の午後、編集業務などが終わると真鶴の町を散歩がてら、買い物などに行く。

ここは真鶴港の目の前にある干物屋・髙橋水産。町歩きでも宿泊客にご案内させてもらうなど、お世話になっているお店。この七輪で干物を焼いて試食させてくれるのだが、本当に絶品で、干物で感動したのは初めてだった。プライベートでもよく買いに行っている。

 

 

ここは最近岡山から移転オープンされた「珈琲店watermark」さん。

「秋日和」のすぐ近くで、朝のコーヒー豆を買う場所。本好きのオーナーが集めた本が壁際にずらっと並んでいて、本の話をしたりして長居することもしばしば。

 

 

コーヒー豆屋さんの向かいにある美容室。ここに月に1回、三崎から出張美容室が来る。

出張美容室を担当しているのは、三崎にある「花暮美容室」さん。東京のヘアサロン出身の超一流の方で、これまで移住者がヘアカットするのは町の外だったが、出張美容室が来てからは町で髪を切る人が多くなった。この出張美容室も「真鶴出版」が繋いだご縁。

 

 

波の音を聞いてぼーっとするのが好き

ゆっくりしたい時は浜辺まで散歩する。

ここは岩海岸。目の前は有料道路。静岡にいた頃から海を見に行くのが好きで、波の音を聞いてはぼーっとしていた。真鶴では歩いて10分ほどで浜辺にたどり着くので、海を眺めるのが好きな自分にとってはありがたい環境。

 

 

休日は真鶴を出て、小田原に行く。

小田原に向かうと途中、車窓から海が見えて好きな景色。

海の近くに住むことが憧れだった。この景色を見て改めて海の近くに住んでいることを実感させられてる。

 

  

真鶴から電車で15分すると、小田原駅に着く。

真鶴にはチェーン店がないため、真鶴では揃わない日用品などを買いに行く。

 

 

小田原のチェーンのカフェは平日よく行く作業場。

どうしても自宅にいると作業に集中できないため、気持ちを奮い立たせるために、小田原まで出てこうしたカフェに行って作業する。

 

 

自分の人生に影響するようなことを、いろいろ教えてもらった。

高台から真鶴の町を眺める。

町歩きでも訪れる高台の場所で、好きな風景。地元の静岡は平坦で、徒歩圏内にこうした町を見下ろせるような場所がなくて、こうした高台に憧れがあった。

 

この7月に真鶴を出て、東京のベーカリーで修行をすることになった。

真鶴にいた時間、「真鶴出版」で自分の人生に影響するようなことを、いろいろ教えてもらった。

例えば、地域への入り方。
真鶴に来るまでは、地域に入り込むということがそこまで難しいことではないと思っていた。けれど、真鶴にきてそうではないことを実感した。

地域の人の元に通ってコミュニケーションをすることで、地域に溶け込み、認められる。
「真鶴出版」の二人には、そうした仕事の仕方、作り方を教えていただいた。

そして、自分が次に何をしていきたいか、ということも見出すことができた。二人には本当に感謝している。

 

(聞き手:カトウ ミワコ)

いずれ地域で仕事を作り、自分の場所を持てるようになりたい。その時には「真鶴出版」で学んだような地域への入り方、仕事の作り方をしていきたい。