農家さんと食べる人を近づけるくらし
山梨県山梨
このくらしの主
オガタ キリコさん(23歳)
神奈川県横浜市出身。大学卒業後に山梨県山梨市へ移住。大学2年生のときに「ふるさとワーキングホリデー」に参加。その際に宇和島に行き、都会とは全く違う価値観に触れたことで一次産業へ関心を持つようになった。大学在学中はポケットマルシェのライターとして日本各地の一次産業の生産者に会いにいき、農作業のお手伝いをしながら記事を書いていた。
昔から柑橘類が好きで、各地のみかん農家のところによく通っていた。現在は地域おこし協力隊として山梨市内の地域商社で農家などのサポートや広報を担当しながら、引き続きポケットマルシェのライターを兼業している。
撮影時期:2019年8月~10月
7時起床。身支度を整えて朝ごはん。
近所のパン屋さんで買ったパンの上に、農家さんのお手伝いに行ったときにもらった桃ジャムを乗せて食べる。となりの葡萄も、他の農家さんからのいただきもの。
朝ごはんを食べたら、ポケットマルシェの仕事をすこし進める。
毎朝出勤前に飼っていたニワトリに餌やり
8時頃、毎朝出勤前に飼っていたニワトリに餌やり。
ニワトリプロジェクトをやっている同僚が飼っていた3羽のニワトリで、卵がおいしくなるようにと、ワインを作る工程で出てきた葡萄の搾りかすを餌にしていた。
(この写真を撮ったあと、ニワトリ小屋の柵の中に穴が掘られてイタチなどの動物に食べられてしまったため、いまはニワトリがいなくなってしまった。また飼うかは検討中。)
車で景色が綺麗な場所を通勤できるのはいい
通勤中に見える、家と職場の中間あたりに見える稜線。
富士山を背にして車を走らせているので、バックミラーに富士山が写って見えて好き。
都内の満員電車に乗っていたときはストレスを感じていたので、車で景色が綺麗な場所を通勤できるのはいい。歌いながら運転している。通勤時間は慣れたけど、長時間運転するのは苦手なので自分の運転で遠出はしない。
会社に就職するだけが人生じゃないんだなと気付いて
9時頃に事務所に出社。仕事は地域商社の広報担当で、農家さんで見聞きしたことや、SNSに投稿する文章をまとめたりしている。
働いている職場は大学4年生の時に関わっていたプロジェクトに参加したことがきっかけで、農家さんたちの手助けができればと思って入社した。
学生の頃にポケットマルシェの取材や縁のある農家さんを訪ねるために全国各地でたくさんの人と会って話すうちに、会社に就職するだけが人生じゃないんだなと気付いて就活をしないことにした。私は会社に拘束される働き方が向いていないなと感じていて、卒業後はフリーランスライターとして働こうと思っていたけど、はじめは拠点があったほうがいいなと思って、縁のあった山梨市の地域商社に入社した。自分の考えで動くことのできる環境に身をおいて、自由にやりたいことをやらせてもらっている。
将来的に多拠点で一次産業と関わっていきたいと思っていて、今はこの山梨市に関わりながらその力をつけていきたいと考えている。
写真は事務所のキッチン。この日は葡萄から酵母を抽出して、そこから作った天然酵母パンを作った。ときどきキッチンを使って、農家さんの果物や葡萄の搾りかすなどを使った加工品のお試しを作っている。軸から外れた葡萄は捨てられるけど、もったいないからそれを加工品として売れればなあと思っていて自発的に実験をしている。
事務所に誰もいないときに、ときどき気晴らしにピアノを
前に廃園になった保育所を事務所として使っているので、そのときの物が置いてある。ピアノもそのひとつ。事務所に誰もいないときに、ときどき気晴らしにピアノを弾いている。
横にあるスクリーンは映画を観るために新設したもの。地域の人たちも一緒に映画を観て楽しめるように “地域の集まれる場(たまり場)”にしたいと思っている。
仕事おわりに農協の直売所へ。
野菜類は直売所で買ったほうがおいしいので、大体直売所で買う。
直売所にはおもしろいものも売っていて、この日は「ワインきのこ」というきのこを見つけた。ワインの菌床を使って椎茸を育てているらしい。食べてみたけど、ワインの味はわからなかった。
11月後半くらいになると農家さんやおじいちゃんおばあちゃんが干し柿を作る
住んでいるところの近くのご近所さんが干し柿を干している風景。
11月後半くらいになると農家さんやおじいちゃんおばあちゃんが干し柿を作るので、ベランダに柿が干している家を見かけることが多い。
18時頃に帰宅。
夜ごはんやお風呂を済ませた後は、学生からライターをしているポケットマルシェの仕事。はじめて農家さんのところへ行ったとき、生産地や農家さんの想いが全然消費者に届いてないなと思ったことがきっかけで、生産者と消費者の距離を縮めるビジョンに共感した“ポケットマルシェ”のインターンとして参加。大学卒業後も出勤前の隙間時間や帰宅後の時間を使って、1日に2時間くらいキュレーションや記事の仕事をしている。
一通り作業を終えたら、22時頃に寝る。
農作業が大好きで、もはや趣味と言ってもいいレベル
ある日の休日。
仕事が休みの日は農家さんの作業のお手伝いをしている。農作業が大好きで、もはや趣味と言ってもいいレベル。この日は葡萄農家さんの畑に行って、葡萄の収穫をした。もくもくと作業していくと、段々とコツをつかんで上手くなるので楽しい。
お昼をまたいで作業するときは、昼ごはんに農家さんの手作りのお弁当をいただくこともある。
お手伝いした後にいただいた葡萄たち。選果落ちのものをいただいた。
山梨に果物が多い理由は1日の寒暖差が大きく、自然災害が少ない地形などが影響していると思う。このほかに柿、キウイとか様々な果物が作られている。
農家さんが6月にオープンしたカフェのお手伝い
別の日の休み。農家さんが6月にオープンしたカフェのお手伝い。
春頃に古民家のリノベーションや農作業のお手伝いをしていて、そのときに「カフェも手伝ってほしい」という声をいただいて、そのままお手伝いしている。農泊もやっているため、1階がカフェで2階が泊まるところになっている。
8時くらいにカフェに来て、店内の掃除やオープン準備。ごはんの仕込みなどのお手伝い。
カフェ自体は11時半からオープンして、16時まで営業している。写真はカフェメニューの葡萄のワッフル。
カフェ閉店後に片付けをして、農家さん一家と一緒に夜ごはん。
ときどきこうやって一緒にごはんを食べる。農家さんも元々は移住者で、旦那さんは静岡県出身の人。
農家さん夫婦は、宿泊体験を通して山梨の農業や食に興味を持ってほしいと思っている。安心安全なフルーツをたくさん食べてほしい、商品として発送できないものも処分ではなく、デザートという形に変えて提供できたらとカフェと農泊をはじめた。奥さんは「自分たちが楽しむだけじゃなく、移住・定住促進などで少しでも地域に貢献できたら」と話している。
お休みのときに農家さん一家と一緒に新潟と長野を巡って、山梨に戻ってくる小旅行をした。
山梨県北杜市に星を見に行こうとしたこともあったけど、天気が悪くて断念。その代わり、次の日に古民家のレイアウトが上手な場所に勉強がてらあそびに行った。
自分で干し柿を作りたくて、農家さんに手伝ってもらいながら
事務所の軒下に干しはじめた柿。
自分で干し柿を作りたくて、農家さんに手伝ってもらいながら作って干している。木から収穫するところからはじめて、皮をむいて干すまで丸1日かかった。200個くらい吊るしていて、年末くらいに干し柿になっている予定。
この景色を見ながら飲むワインは最高なんだろうなと思いながら富士山を見ていた
11月中旬頃の景色。紅葉したワイナリーの葡萄畑。
「ワインツーリズム」というワインを飲み歩くイベントで巡ったワイナリーから見た風景。後ろに写っている富士山がとても綺麗だった。
私はここに着くまでにアルコールギブアップ状態だったけど、この景色を見ながら飲むワインは最高なんだろうなと思いながら富士山を見ていた。
(聞き手:カトウ ミワコ)
拠点を決めず、日本中のこだわりを持って生育をしている個人農家さんを発掘して、「農家さんに直接会いにいきたくなるような話」を食べる人たちに向けて届けたい。そして、ただ発信するだけじゃなくて、農家さんたちが育てた作物を完全に説明できるプロになってマルシェのような売る場をつくりたい。