漁師として、ここに根付くということ
岩手県陸前高田
このくらしの主
ミウラ ヒサコさん(28歳)
神奈川県出身。東京の大学に在学中、ボランティアで訪れた東日本大震災の被災地、陸前高田で漁業を体験する。1ヶ月間程のボランティア生活のなかで、海とその地域に住む人たちに魅了され、卒業後陸前高田に移住。現在は漁業女子として養殖牡蠣漁の職に就いている。
撮影時期:2019年2月~3月
■ミウラ ヒサコさんの活動
5時半、起床
漁師なので朝は早い
5時半、起床。漁師なので朝は早い。
家で朝ごはんを食べてから、仕事に向かう。ちなみに住んでいる家は仮設住宅。2DKあって、けっこう広い。
最近は、震災後に建てられた仮設住宅から出ていく人が多く。多くの仮設住宅の解体が進んでいる。今住んでいる仮設住宅も一年後には解体される予定。
少しずつ仕事モードに切り替わっていく
6時過ぎ、仕事に向かう。
仕事場である漁港までは、車で10分ほど。防潮堤の奥に見える海が自分の働いている漁港。
海が見えてくると、また一日が始まる感じがして、少しずつ仕事モードに切り替わっていく。
この漁港が自分にとっての”ホームグラウンド”
6時半、仕事場に着く。
この漁港が自分にとっての”ホームグラウンド”。漁をする際の起点となる。朝、この静かな景色の中にいると、とても心が落ち着く。とても好きな風景。
準備が終わると、養殖をしている沖のほうへと向かう。船を操縦しているのは社長。
養殖場に着くと、牡蠣を水揚げしてカゴに入れていく。
牡蠣を入れると、一カゴ40㎏程になる。それを2人がかりで船に並べていくので結構な力仕事。大体1回につき80~100カゴくらい埋まる。
お茶を飲んだり、お話したりして一服する
10時頃になると休憩の時間。仕事の仲間たちとお茶を飲んだり、お話したりして一服する。
このベテランのおばさんたちも仕事仲間で、船に乗らないで牡蠣を掃除する専業のスタッフ。スタッフは専業のスタッフと、船でも陸でも作業する兼業スタッフの2種類がいる。自分は兼業スタッフで船での漁作業以外にも陸での作業も行う。
これは海に出ず、漁港で牡蠣の出荷作業をしているときの様子。
発砲スチロールの箱に牡蠣を詰めていく。どんな人が、この牡蠣を食べるんだろうと思いながら、作業をする。
仕事仲間の77歳のおばあちゃんが毎日くれるお弁当
12時、お昼ご飯を食べる。
このご飯は自分が作ったものではなく、仕事仲間の77歳のおばあちゃんが毎日くれるお弁当。ご飯はおばあちゃんと”はんぶんこ”するので、いつも食べる前に半分減っている。
3月中旬からは、一か月ほどワカメ漁が始まる。ワカメが枯れる前に収穫しなくてはならないため、短期間で人手がいる作業。漁協にワカメを卸す期間が決まっていることもあり、急ピッチで作業しなくてはならない。
これは、朝の収穫作業を終えて、みんなで薪ストーブを囲んで朝ごはんを食べているところ。
ワカメ漁のかき入れ時なので、仕事仲間の息子、甥っ子などが春休みを利用して手伝いに来ていた。
自分以外の仕事仲間はほとんど親戚同士で、大家族のような雰囲気。
仕事の後は、友達と家の近くにあるカフェへ行くことも
時期によってもちがうが、15時くらいに仕事終了。
仕事の後は、友達と家の近くにあるカフェへ行くこともある。陸前高田は自分と同じ歳くらいの移住者も多い。
家に戻ると、ブログの”note”を書くのが日課。
牡蠣養殖の仕事を色んな人に知ってもらうため、日々の仕事のことを綴っている。大学の頃にはライターを志したこともあったため、文章を書くのは楽しく、長く続いている。
休みの日、陸前高田の市街地にあるシェアスペースで、映画の上映会に参加した。
映画上映会はこのシェアスペースで2か月に1回開催されていて、持ち回りで映画をセレクトして流している。この日は、自分が上映する映画を選ぶ番だったので、オーガニックの食品に関する映画を上映した。
このシェアハウスは、2年前かさ上げされたエリアにできたもので、魚をさばく会やパン作りなどいろいろなイベントを行っている。
カードゲームなどをしてゆっくりした
また別の休日、遠野に住むアベさんのシェアハウスに遊びに行った。
遠野までは車で一時間くらい。この日は大阪から来た友達に会いに行った。みんなでご飯を食べたり、カードゲームなどをしてゆっくりした。
遠野に行った次の週、宮城県の石巻市にある「FISHERMAN JAPAN」へ。
インターンをしている友達に会いに行った。個人的なつながりで石巻や遠野などに出向くことも多い。
ここでは震災に寄り添って日常が流れている
3月11日。この日、陸前高田では年に何度かしかない雪が降った。
写真の左側に見えるのは、津波で被災した中学校。自分は震災以降にここに来た移住者なので被災していないが、地元の人たちと話していると、ふとしたきっかけで3.11のことが話題にのぼることがある。震災は8年前のことだが、ここでは震災に寄り添って日常が流れている。
(聞き手:カトウ ミワコ)
漁業人口が減るなか、この仕事の魅力を知ってもらえるよう、発信することで漁業に貢献したい。そして、漁師としてしっかりとこの地域に根付くこと、それが今の目標。