景色と人に恵まれて

「きらきらはしてないけど 穏やかだなって」

景色と人に恵まれて

岩手県陸前高田

このくらしの主
ミウラヒサコさん(31歳)

わかめ生産者 / 編集者 / ura 神奈川→陸前高田へ移住。新卒で漁業の世界へ。2020年から、わかめ生産者として養殖をはじめる。牡蠣/わかめの養殖に携わりながら、ライフスタイルブランド"ura"をはじめるため、準備中。

鳥に食べられるまえに摘みさこ」って電話をくれて

朝、5時ちょっと過ぎに起きる。

この日の朝ごはんは、パンにジャムをつけて食べた。このジャムは、職場で一緒に働いてるおばあちゃんの家の畑にあるブルーベリーを摘ませてもらって作ったもの。

8年くらい前から陸前高田の牡蠣とわかめの養殖をしている会社で働かせてもらってて、このおばあちゃんはその職場の先輩で、頼りになる”お母さん”みたいな感じ。

おばあちゃんの家にブルーベリーがあるのを前に聞いて、おばあちゃんは私が気にしてるのを気にかけてくれてて。

「鳥に食べられるまえに摘みさこ」(鳥に食べられるまえに摘みにこい)って電話をくれて。

 

 

造船場の写真。
今年のお盆明けから一ヶ月くらい、職場で漁に使っている船の修理。

今回の修理で、エンジンとかの機械類が新しくなった。エンジン周りの専門的な作業は、専門の人にお願いして、そのほかの掃除とかは自分たちで。

今までうちの船はすごい爆音を鳴らしながら動いてたけど、修理のあとはすごい静かになった。

エンジン音は船によって全然違って、自分のところの船だとか隣の漁師さんの船だとか、毎日音を聞いてるとわかるようになる。

 

たまに話しかけられたりしながら

2020年から、わかめの養殖を自分の名義で始めた。

職場の仕事が船の修理で休みに入るタイミングで、自分のわかめ漁の準備をしていた。

これは、わかめの養殖に使うロープの掃除をしているときの写真。
わかめの収穫が終わったあと、春に海から引き上げて、夏のこの時期にその掃除をする。

ロープには貝とか珊瑚っぽいものがたくさんくっついていて、それをひたすらこすり落とす。
日中に作業してるとすごい暑いから、早朝から午前中にかけてと、夕方の涼しくなってくる時間に作業をしていた。ラジオをつけて。

写真の上側が道路で、知り合いとかが普通に通るから、たまに話しかけられたりしながら。
一緒に働いてるおばあちゃんがスイカくれたり。きくちさんの犬の散歩コースの近くだから、きくちさんが差し入れをくれたり。

 

 

これは、きくちさんの生姜畑に行った時の写真。

生姜のイベントをやってて。私が行った時にはイベントは終わってたんだけど、畑を見せてもらって。

 

帰りの夕方がきれいだった

この日は、海の仕事が終わってから自分でやっている商品開発系の作業をしに図書館に行った。
家でやることもあるけどだらだらしちゃうから、考えることとかは外でやることが多い。

この日は、図書館の帰りの夕方がきれいだった。
高い建物がなくて、ぱーってひらけた夕方の空。

 

なんで学校みたいなんだろう

別の日。
掃除してきれいにしておいたロープを組んで、「養殖施設」を作る。「養殖施設」は、2本のロープを組んだもの。職場のボスたちに手伝ってもらった。

出来上がった「養殖施設」はフォークリフトで運ぶ。フォークリフトは大きさにもよるけど、これは普通免許で運転できるサイズ。フォークリフトの講習は自動車学校でやっている。

ちなみに、私たちはなぜかこの場所を「校庭」って呼んでて、奥に見える倉庫を「体育館」って呼んでる。なんで学校みたいなんだろう。

 

 

働いている牡蠣とわかめの養殖の会社には、大阪からきた後輩が2人いる。彼らに手伝ってもらって、わかめ漁のための準備をしていた。

この2人は、漁師になりたくて、全国各地の漁業に関わる場所に電話をかけていたところ、陸前高田の水産課につながって、うちの職場で2人を受け入れすることになり、今は修行中。後々の独立を目指している。

 

 

職場でやっている牡蠣とわかめの仕事と、自分で始めたわかめの仕事の他に、1年半くらい前からもうひとつの事業準備をしている。初めてやることも多くて、不安になったりもするけど、まわりにいる人たちが気にかけてくれる。

これは海を見ながら、仕事とか色々な悩み事の相談を聞いてもらっていた時。

外の空気の中でお茶を飲んだりするのが、すごいいいなって。

 

いい大人に囲まれてるなって

カモシーという複合施設でバリスタの友達がイベントをやっていた。行ってみると、いちご農家のまつださんも来ていた。

自分の事業を始めたりしてわからないことも多いけど、陸前高田には事業者として先にやっている人たちがたくさんいて、それぞれの場所でみんな戦ってる仲間みたいな感じがするし、相談できる存在。


自分がしんどくなると、みんな気にかけてくれる。
いい大人に囲まれてるなって思う。

 

 

生産者になって2年目のわかめの種まき作業をアルバイトとして友達たちに手伝ってもらった。
ピースをしているのは、仲良しのアベマホコ

ほかの業種の人が農家さんや漁師さんのところにお手伝いに行くこともあったりする。

 

毎日みていても、毎日違うし、毎日きれいだなと思う

わかめの養殖施設を張りに行った時に、海から見えた山。

自然の景色は、毎日みていても、毎日違うし、毎日きれいだなと思う。

今までこんなにずっと自然を見ることはなかった。地元よりこっちのほうが落ち着くし、関東にいた頃より色を感じる感覚が強くなった感じがする。

時間とか季節とかの変化が全部色に反映されているなって思う。

 

 

友達と花火大会に行った。

左の子はこの前まで遠野に住んで編集とかの仕事をしていて、今は関東にいる友達で、右の子は岩手と東京の2拠点をしている写真家の友達。

普段住んでいる場所は離れているけど仲良しの友達たちで、定期的に会ってお話したり、泊まりに行ったり来たりしている。

この日、左の子が陸前高田のカフェで、趣味でやってるうつわの個展を開いてたので、それを見ながら一緒にごはんを食べて、その後で花火を見にきた。

ちなみに右の子は、自分の事業として始めたわかめの養殖の作業を写真に残してくれた。

 

 

「くらしてん」のおふたりが関東から遊びに来てくれた。

前に会いに来てくれてときには、二人だったのに、子どもが増えて今回は三人になっていてなんとなく感動した。

「くらしてん」の活動の手伝いを始めてから何年か経つけど、二人が自分たちが面白いと思うことをずっと面白がってるところを見て、こっちもそれをみて面白がっているような感じがする。

 

たまにゆっくり海を眺めたくなると、ここに来る

たまにゆっくり海を眺めたくなると、ここに来る。

ここからみる夏の夕方が1番きれいだとおもって。

ぼやーと海を眺める。

だんだん暗くなっていくグラデーションがすごくきれいで、向こうの山の稜線も空も水面もすごくきれいで。

 

(聞き手:カトウ シュン)

悩んでるときに気にかけてくれる人たちがいたりとか、 遊びに行こうって言ったら一緒に行ってくれる友達がいたりとか、 普段みる景色がきれいだなって思えることとか。 いい日常を暮らしてるなって。 最初にここにきたときのことを思い返すと、だんだん暮らしやすくなってきている感じがある。 特別きらきらはしてないけど、穏やかだなって。 被災地に暮らしていると、あたりまえをあたりまえと思わない方がいいなって思うことがたまにある。 あたりまえのものが、次の瞬間にはなくなってしまうかもしれないから。 だから、目の前にあるものをできる限り大事にしていきたい。