家族に歩幅を合わせる暮らし【後編】

「この街に暮らしている 一員という感じがする」

家族に歩幅を合わせる暮らし【後編】

千葉県八千代

このくらしの主
カトウシュンさん(37歳)

北海道函館市出身。高校卒業とともに地元を離れ、大学で建築を専攻。
大学院卒業の後、関東で建築設計の仕事をしながら、メディア「くらしてん」を運営。
日々の暮らしの中で感じたことをnoteで綴っている。

■カトウシュンさんの活動

この日は、出社の日。

昼からの打合せだったので、午前中は少しゆっくりとした後、歩いて駅まで向かう。

 

 

当たり前のことが新鮮だった

駅までの道のり、ゲートボールをやっている高齢者のプレイを眺めながら、ゆっくり歩く。

こういう風景は、当たり前にあるものなのかもしれないけれど、僕にとってはとても新鮮なものだった。

というのも、これまで労働時間が管理されている会社で、しかもオフィス街で働くことが多かったので、基本的にサラリーマンにしか会うことがなかった。

今の会社に転職してから、子供連れのお母さんや退職した後の高齢者の暮らしなどを垣間見るようになって、サラリーマン以外の暮らしも存在しているんだなという、当たり前のことが新鮮だった。

 

 

電車もラッシュの時間に乗ることはなくなった。

あんなに嫌だった通勤電車も時間をずらせば快適な移動時間になる。この時間が、むしろ自分1人になれるとても有意義な時間。

 

 

自分だけの時間を贅沢に堪能する

息子が生まれてからゆっくり音楽をきいたりする時間も取れなくなったので、この電車移動の間にアルバムを一枚をじっくりと聴いたり、あとはゆっくり本を読んだり、自分だけの時間を贅沢に堪能する。

 

 

地下鉄の乗換。薄暗く無機質な感じがいかにも東京らしい。

転職する前は、毎日こういう地下道を通らなければならないのが嫌で、気が滅入っていたけれど、今は月に数回ということもあって、こういった風景もアトラクションのように楽しめる。

 

 

軽い観光気分のような感じ

地下鉄を降りて、地上へ。

会社の事務所のある外苑前の風景。住んでいる八千代市とは違って都会だ。

ここには一ヶ月に一回ほど来るだけなので、軽い観光気分のような感じ。

仕事は早く終わらせて、下調べしておいた店でランチを食べたり、ショップに寄ったりするのが楽しい。

 

 

これはまた別の日。現場に向かう。

今はマンションリノベの設計の仕事をしているので、色んな街に現場があって、その都度違う街へ行けるのも楽しい。

知らない街を探索するのが好きなので、少し余裕をもって行き、現場のまわりをぶらぶらする。

 

 

その街で評判の良いランチをネットで調べておいて行くのも一つの楽しみ。孤独のグルメの主人公のような感じがしてくる。

 

 

仕事を終えて、帰りの電車内。

やはり帰りの移動時間も無駄にしたくない。

親になったからといって、子ども心を忘れたくなくて、switchを持ち歩いている。こういう遊びの部分を暮らしのなかに取り入れるようにしている。

 

 

風景の中の緑の割合が増えていって

千葉に近づくに連れて、風景の中の緑の割合が増えていって、ああ、帰って来たなと思い、なんとなく心が落ち着いていく感じがする。

都会もたまに行くにはいいけれど、やっぱりホームはそんなに都会じゃなくて良くて、そのバランスがいまはちょうどいい。

 

 

16時頃には家に着いたので、辺りはまだ明るい

最寄りの駅に着いて家まで歩く。

この日は仕事が早く終わり、16時頃には駅に着いたので、辺りはまだ明るい。

学生や高齢者などもまだ歩いている時間で、自分もこの街に暮らしている一員という感じがする。

 

 

マンションの下では子どもたちが遊んでいた。こういう光景を見られるのも、なんとなく良い。

これまでの会社だと、仕事を終えて帰る頃には当たりは真っ暗で、出会う人は疲れた表情のサラリーマンばかりだった。

 

 

バランスを取れた今の暮らしがとても幸せ

家に着くと、家族が迎えてくれた。

特別なことはないが、仕事と家庭、都会と田舎、いろんなものの中で、ちょうどバランスを取れた今の暮らしがとても幸せだなと、ふと思う。

 

(語り手・聞き手:カトウ シュン)

最近になって、今の状態を満足できるようになってきたように思う。これまでは何かしらに不満を抱え、もっと良くなるにはどうしたら良いかという考えに常に囚われていたような気がする。 家族と過ごす何気ない時間、特別ではないけれど穏やかな風景の中で、自分のバランスを保って暮らしていきたい。