そのすべてがまちをつくるということ

「懐かしい味として 思い出してもらえれば」

そのすべてがまちをつくるということ

岩手県陸前高田

このくらしの主
ハギワラ タケユキさん(37歳)

東京都出身。大学卒業後、都内のメーカーにて営業職として勤務するも、地方創生に関わる仕事に就くため、新潟の行政職員に転職。その後、より直接地方創生に関わるために陸前高田へ移住し、現在は陸前高田の学童保育の職員、子ども食堂「たかた☆ゆめキッチン」スタッフ、つぼ焼きいも屋さん、猟師、スノーボードインストラクター、…とパワフルに活動している。
撮影時期:2019年3月~5月

■ハギワラ タケユキさんの活動

おさけの日(チャレンジショップ・バル)
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おいもの日(つぼ焼きいも)
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ごはんを食べたあとは、諸々の活動の準備をする

朝6時、起床して朝ごはんの用意をする。

手前に写っているのは、具がたくさん入ったみそ汁。具材になる食材は、知り合いから頂くことも多い。漁師の三浦さんから、わかめをもらうこともある。

いつもゆっくりテレビを見る時間はあまりないが、朝ごはんの時だけテレビでニュースを見る。ごはんを食べたあとは、諸々の活動の準備をする。

 

 

いつも表情がちがって毎日みても飽きない

10時半過ぎ。家を出て、車で仕事に向かう。
通勤の時に見えるこの海は、いつも表情がちがって毎日みても飽きない。ちなみに仕事場は家から車で5分ほど。

 

 

東京で民間企業に勤めていた時とはやはり心持ちがちがう

仕事場に着く。
平日の週5日勤務している学童保育の仕事場で、作業を始める。

学童保育の場所は学校の一角。正社員は自分だけで、午前中は一人で作業をすることが多い。市役所のこども課と連携しているため、そのための資料を作成したりする。

仕事場に自分ひとりしかいないこともあるが、東京で民間企業に勤めていた時とはやはり心持ちがちがう。

 

 

12時になり昼休憩をとる。

食事はもっぱら家で作ってきたお弁当。昼休みは一時間あるので、お弁当を食べた後は筋トレをする。
スノボのインストラクターをしていることもあり、日課として体を鍛えている。

 

 

14時頃、パートさんたちが出勤して、午後の作業を行う。

パートさんたちは全員主婦。子どもたちが来る15時までの間、子どもの状況など情報共有をしながら、準備をする。

ちなみに、これは月に1回行う季節の飾り付けを作っているところで、今回は夏に向けて朝顔などの花を作って飾り付けた。

 

 

学校の授業を終えた子どもたちが続々とやって来る

15時頃、学校の授業を終えた子どもたちが続々とやって来る。

学童に来るのは、低学年を中心に1年生から6年生までの30人ほど。まず宿題をして、終わったら遊べるルールになっている。30人もいると、子どもたちとは言え、遊び相手をするのに結構な体力がいる。

18時頃、保護者の方が迎えに来て、子どもたちが帰っていくと、掃除などの後片付けをして帰宅する。

 

 

この日は、学童の勤務の後に子ども食堂「たかた☆ゆめキッチン」の打ち合わせに参加した。

月に一回開催している「たかた☆ゆめキッチン」は、子ども食堂ではあるが、経済状態に関係なく、どんな家庭でも参加できるような仕組みにしており、ご飯の提供だけでなく、子どもたちが身体を動かすためのアスレチックも提供している。この打ち合わせでは、次の開催に向けて献立を決めたり、食材の調達などを決めた。

打ち合わせが終わり、家へ帰るのは22時頃。お風呂に入ってすぐに就寝する。

 

 

子どもだけではなく、親同士の交流も生まれている

こちらは「たかた☆ゆめキッチン」開催の様子。毎月第3金曜日の夜に開催している。

今回はスタッフを含めて100人ほどが集まった。献立は決まってカレー。食材は購入するものもあるが、野菜は農家やJAからも提供していただいている。子どもは無料だが、大人は参加費で300円支払っていただく仕組み。

子どもだけではなく、親同士の交流も生まれている。

 

 

休日の日曜日、朝5時に起きて、”つぼ焼きいも”を販売するための準備をする。
8時には販売場所の公園に着いて、お店の設営を行う。

“つぼ焼きいも”とは、普通の石焼き芋と違い、壺の中でじっくり火を入れて焼く焼き芋のこと。石焼き芋と違い、蜜のようにとろける様な甘い焼き芋になる。写真の真ん中にある壺で焼くのだが、焼き上がりに3時間かかるので、販売の際は家で焼いておいたものを温めて提供する。

 

 

まちづくり・地方活性化の一環として捉えている

9時半、お店がスタートする。
普通のスーパーで売っている焼き芋より割高なのだが、リピーターさんも多く、100本が2時間半くらいで売り切れてしまう。

このつぼ焼きいも屋も、自分にとってまちづくり・地方活性化の一環として捉えている。地方活性化で、”食”は重要なキーワードだと思った時に出合ったのが”つぼ焼きいも”だった。

焼き芋はアレルギーがなく、離乳食を食べている赤ちゃんから高齢の方まで誰でも食べられる食べ物。より甘みが凝縮された”つぼ焼きいも”なら、美味しくていろんな人に喜んでもらえるし、他にはあまりない新しい味として買いに来るきっかけにもなる。

ゆくゆくは、子どもたちが大きくなった頃、子どものときに食べた懐かしい味として思い出してもらえれば、広い意味でまちづくりに貢献できるのではないかと思っている。

 

 

子どもが自然の中で遊べるようにするための場所づくり

この日は、学童へ出勤するまでの時間を利用して、今進めている森の遊び場づくりに行った。
森の一角に、子どもが自然の中で遊べるようにするための場所づくりをしている。

2枚目は平均台の作るために木を倒したところ。木の特性を判断して、遊具を作っている。
メンバーは子ども食堂で出会った、子どもの動植物あそびに詳しい方を中心に、2名~6名で活動している。(1枚目の若者たちは近くにいたので、丸太運びを手伝ってもらった方々。)

 

 

猟師の仕事をすることもある。これは畑の獣害を防ぐためのワナを仕掛ける準備をしているところ。

猟をするためのワナの免許を持っていて、ここでは箱ワナと括りワナを仕掛けた。ハクビシンやタヌキ、鹿、熊など大小さまざまな獣が畑を荒らす。

耕作放棄地が多いと、天敵がいなくて繁殖してしまうので、こうした猟が必要になる。

 

 

スノボのインストラクターとしてのレベルアップを図るための勉強会に参加した。

新潟にいるときにスキー場の活性化を考えてインストラクターの資格を取ったが、陸前高田では、震災にあった子どもたちにスノボを通して達成感を与えるためにインストラクターをやっている。

 

 

陸前高田のチャレンジショップの一角にお店を構える準備中。

日曜日はつぼ焼きいもとスイーツを販売し、金曜~月曜は夜にちょっとしたバルにする予定。この時はまだ内装工事を始めたばかりだったが、7月にオープンした。今一番力を入れていること。

 

 

ひと息つける時間ができるとサイフォンでコーヒーを淹れる

週に1回くらい、ひと息つける時間ができるとサイフォンでコーヒーを淹れる。
慌ただしい毎日の中で、ゆとりを感じられる時間。

 

 

ここから日の出が見える

キッチンから見える海の風景。
冬だと緑がなく、もっと海が見える。ここから日の出が見える。好きな風景のひとつ。

 

(聞き手:カトウ ミワコ)

 

ほとんど休みはないけれど、東京で会社に勤めていたときとは、まったくちがう感覚。働くというよりは、”真剣に遊ぶ”という感覚に近いと思う。ゆっくり休める時間はあまりないけれど、毎日が充実している。 学童保育、「たかた☆ゆめキッチン」、つぼ焼きいも、…など、自分のしている活動は、すべてまちづくりだと思っている。自分ができることで、このまちに住む人達に喜んでもらい、その結果、陸前高田を好きになってもらうことで、結果として50年~100年後には目に見える形でこの街が変わっていくのではないかと考えている。