海を望む場所で自分を深める

「こっちに来て東京の “当たり前”に出くわしてない ことに気がつく」

海を望む場所で自分を深める

岩手県陸前高田

このくらしの主
ハシヅメ ユウトさん(37歳)

東京都中野区出身。大学卒業後、CM制作会社でプロダクションマネージャーとして勤務。ずっとテニスをしていたこともあり、スポーツで地域貢献できるスポーツツーリズム事業をする会社に転職。8年間の勤務後、宿泊業についてのキャリアを深めたいと移住メディアで見つけた陸前高田の箱根山テラスのマネージャーに転職。転職を機に陸前高田に移住。フレスコボールに関する活動も行っている。
撮影時期:2020年9月~11月

■ハシヅメ ユウトさんの活動

東京に住んでいた時の朝とは違い、海を毎日眺められるのは嬉しい

7時に起床。部屋の窓から海を眺める。

住まいは高台の集合住宅。東京に住んでいた時の朝とは違い、海を毎日眺められるのは嬉しい。

海の手前にあるのは、防波堤。自分は震災のあとに移住したので、被災しているわけではないけれど、防波堤が目に入ると、いろいろと思いが浮かぶこともある。

 

 

朝ごはんを食べる。朝ごはんは簡単に自炊する。

野菜はたまにもらったりするが、基本的にはスーパーで購入したもの。“地方”とはいっても、仕事柄なのか、住んでいるのが集合住宅だからか、ご近所づきあいはそこまでなく、おすそ分け的なものの頻度もあまりない。

午後からのシフトが多いので、午前中は家事をこなしておく。

 

 

車に対して苦手意識があったけど

お昼、家を出て勤務先の箱根山テラスに向かう。
箱根山テラスへは車で20分ほど。

東京での通勤は自転車や電車だったけど、移住してはじめて車買って車通勤。移住するまで車に対して苦手意識があったけど、慣れると県内のいろんな場所にいけるので便利だと思う。

まだ冬の時期を過ごしていないので、路面凍結などこれからの冬の運転はちょっと不安。

 

 

”自分の宿”という気持ちを持ってやることが大事

出勤後、午後の業務の準備に取り掛かる。

カフェ業務やチェックインするお客さまを迎え入れる準備をする。
客室の準備をするなかで、一番困ったのは虫が多いこと。虫が苦手で最初は大変だったが、最近ようやく慣れてきた。

陸前高田に来て、接客の仕事に初めて就いた。初めての職種だったけど、これまでもやっていたマネジメント業務という軸はブレてなかったので、不安はなかった。でも、これまでの半年間は、仕事をやりたい気持ちと実際がかけ離れてしまって、心も体も余裕がなかった。最近ようやく余裕も出てきて、お客さまへの接し方も変わってきた。

働き方も、組織に属するのとは違うことを痛感している。箱根山テラスの業務は、分業制になっていたこれまでの会社とは違って、自分で何でもできなくてはならない。だからこそ、”自分の宿”という気持ちを持ってやることが大事だと思っている。

 

 

東京の”当たり前”に出くわしてないことに気がつく

夕方前の1時間、休憩に入る。外に出てウッドデッキでリフレッシュする。

外に出ることで、この景色の中で仕事していることを実感する。自然に囲まれた景色を見ることで気持ちがリセットできて、次の業務への活力が湧く。東京での勤務地は大通り沿いのビルで、外に出てもリフレッシュすることはなかった。

こうしていると、こっちに来て東京の”当たり前”に出くわしてないことに気がつく。電車に乗ってないとか、車の音がしないとか、東京で当たり前にあったストレスがない。それに、これまでストレス発散にお金を使ってきたけど、こうして外に出るだけでリフレッシュできるので、結果的にお金を使わなくなった。

不慣れな仕事で少し疲れを感じることもあるけれど、この景色に救われているような気がする。

 

 

21時に業務が終了。仕事終わりに夕飯の買い出しに行く。
仕事終わりに買いに行けるスーパーはここしかない。買い出しができるように業務を終わらせる。

 

 

午前シフトの日、朝5時に出勤してペレットストーブを付ける。

気温が低くなってくると、朝と夕にペレットストーブを付けて暖を取っている。ストーブを付けたら、朝食サポートに入る。朝食メニューは料理研究家さんが考案してくれたメニューで、地のもの、季節のものを使うレシピ。前日に仕込んでおいて、調理スタッフが朝早く来て作ってくれている。

 

 

仕事終わりに車で30分走ってゆっくり読書しに行く

午前シフトの仕事終わりや休日には、気仙沼のカフェまでお茶しに行く。
気仙沼にある”ハチワレ堂”はお気に入りの場所で、仕事終わりに車で30分走ってゆっくり読書しに行く。

 

 

今年初めて冬タイヤを装備した日。

周りの移住者さんたちは、シェアハウスに住んでいるので仲間内で装備したり、地元の人にやってもらうなど、都会ではお金を払ってお店の人にやってもらうことも、ここでは“知り合いの人にやってもらう”ことが多い。

移住して日が浅く、まだコミュニティに深く属していない自分は、車屋さんを探すのが大変だった。結局、ネットで調べて気仙沼の車屋さんで装備してもらった。

 

 

最近、農家さんの手伝いをしている

最近、農家さんの手伝いをしている。ここは、市内の米崎町で作っている米崎りんごの農家さん。

友人がやっている、サポートがほしい農家さんとサポートしたい人をマッチングするサービスを利用して出会ったリンゴ農家さんの手伝いに出かけた。このサービスはこの近辺でやっていて、LINEでマッチングしてもらうもの

地元の人ととも知り合いになれるし、手間賃もいただけて、とても良い機会になっている。

 

 

仲間を募ってビーチでフレスコボールをしている

平日の午後シフト前や休日には、時間があれば仲間を募ってビーチでフレスコボールをしている。

東京でハマったフレスコボールはブラジル発祥のビーチで行うスポーツ。ラリーを楽しむもので、競い合うスポーツではなく、コミュニケーションを生むスポーツであるのが特徴。陸前高田では有志でやっていて、この時はビーチの近くに住んでいる人が集まってきてやっていた。

フレスコボールに対しては、あくまでも趣味として楽しんでいる。本格的な普及を目的にしてしまうと、義務感が出て楽しめなくなってしまうから。広がり方もゆっくりでいいと思っている。

 

 

フレスコボールのラケットづくりを中学生と一緒にやった時のことを、岩手日報に載せていただいた。

フレスコボールのラケットを陸前高田の木材で作ることもやっていて、先日、偶然出会った中学生たちとラケットづくりをした。その際、観光協会の方のつながりで岩手日報さんを呼んでもらうことになり、記事にしていただいた。

地元の木材でラケット作って、ブランドみたいにできたらいいなと思っている。陸前高田はフレスコボールができるビーチと、ラケットが作れる山林があって、フレスコボールは合っているなと感じている。

 

 

防波堤へのアプローチは神聖な気持ちになる

たまに行く、高田松原津波復興記念公園。

未来を感じる、この先を考える時にくるような場所。公園の入り口にある防波堤へのアプローチは神聖な気持ちになる。

防波堤から見える、松を植えたばかりの浜は、来年の夏には海水浴場として復活予定。フレスコボールも、復活するこの浜でできたらと考えている。

 

(聞き手:カトウ ミワコ)

 

陸前高田へは、これからの自分を作っていくステップアップのための移住。移住して半年、ようやく宿泊業を楽しめる余裕ができてきた。箱根山テラスを作っていく経験を通して、ステップアップしていきたい。